買取実績
今回の出張買取実績は勲六等単光旭日章((旭日単光章))と略章の箱あり一式セットです。
千葉県在住のお客様よりご依頼頂き、当初の予定は家具(食器棚など)の買取が目的でお伺いしたのですが、この様なものも買取してもらえるのかと出して下さったのが旭日章の勲章でした。
元は祖父の遺品として譲り受けた物だそうですが、お客様は女性の方で、生憎、勲章などのミリタリーアイテムには興味がなく、いっそ価値を理解し大切にしてくれる方が他に居るなら譲りたいとのご意向でしたので、買取させて頂きました。
そもそも旭日章とは1875年(明治8年)4月10日に制定され、「国家または公共に対して勲績ある者」を授与基準とし、男性のみを対象にしたものでした。当時は開国まもなく、女性は選挙権すらない時代でしたので、男性に限定しているのは時代背景として致し方ないかと思います。今回の勲六等単光旭日章の場合ですと、現代の場合、市議会議員などの議会議員の方などが主な対象になっているようです。また、現在は2003年(平成15年)の栄典制度改正により女性にも対象基準を広げ、男女共通の勲章となっています。
『旭日』と言いますと、勲章の他にも帝国陸海軍や自衛隊の旭日旗がありますね。警察章も良く見ると旭日のエンブレムです。古来より縁起物として好まれている日章と旭光を組み合わせ、朝日が勢いよく昇ってくる姿を描いたのが旭日でありますが、1つ逸話を紹介しますと、敗戦後、日本は周辺の治安悪化に伴い紆余曲折を経て自衛隊発足に至ったのですが、海上自衛隊の軍旗を旭日からデザインを変えた方が良いとアメリカから助言を受けました。しかしデザインを依頼された方は、これ以外思いつかないと、旭日のまま提出し、今現在も海上自衛隊は戦前の帝国海軍と同じデザインを使い続けています。軍旗などに使用されているせいか、旭日デザインを物騒に感じる方もいるのかもしれませんが、元々は太陽をモチーフにした縁起物ですし、この様なエピソードを持ち、多く国家機関のシンボルマークなど、さまざまに使用され続ける旭日はデザインとして完璧・完全であり、これ以上が存在しない不変のものなのだと推測できます。国内のみならず、一部を除く海外でもデザインとして恰好が良いと好まれる傾向が強いようです。イラストなどでも和風テイストや日本という国家を題材にした場合、日本らしさを強調するのに旭日が描かれるのは常です。様々な観点から見ても旭日は日本を象徴するデザインの一つであることは間違いなく、日本で初めて制定された勲章である旭日章のデザインに旭日を選んだのは、至極当然なのかもしれません。
旭日章は先日の買取実績で紹介させて頂いた瑞宝章と同じく七宝なのですが、赤い連珠の瑞宝章とは異なり、旭日章の方が日章をイメージした分、赤い部分が際立って大きいです。この赤い部分は一見、周りの白い部分の白七宝とは別の素材に見えますが、この赤いものも七宝なのだそうです。セレン、あるいはセレニウムと呼ばれる半金属の一種である二酸化セレンをガラスに添加すると赤色に化学変化を起こすので、それを利用しています。セレンの主な産出国は日本が25%以上を占めるそうなので、日本国内では取り立てて珍しいものではないようですが、赤七宝はルビーを思わせるほど鮮やかな赤色で美しく、指で触るとツルツルとしていてとても滑らかです。
裏側に注目しますと表側の同様の七宝と紐の桐葉章の裏に「勲功旌章」の文字が見えますね。実は栄典制度改正に伴い、一部、デザインが変更されたため、改正後は別のデザインになっていますので、今回の買取させて頂いたお品物が、少なくとも改正以前のものであるのが裏側を見ると分かります。今現在のデザインは旭日小綬章以下・・・つまり、旧勳四等以下の五等(旭日双光章)・六等(旭日単光章)の裏側に七宝装飾がなくなってしまったのです。「勲功旌章」の文字も梨地の金属面に刻印されているだけになってしまいました。つまるところ、裏面がシンプルなデザインに変更されたという事なのですが、少々残念な気がしますね。
今回は本章の他にも箱や略章もセットでしたので、本章単品よりも買取価格をやや高めにさせて頂きました。受章の際の証書も付属していますと更に買取価格が上がりますので、お持ちの場合は是非、証書もお譲り頂けると幸いです。
余談ですが、2011年の震災にて勲章などを紛失されてしまった方、または受勲者のご遺族の方は、紛失した勲記・章記に代る「有勲証状」などの証明書を発行してもらえるのをご存知ですか?詳しくは内閣府ホームページ内の内閣府の対策一覧に「勲章・褒章」の項目があり、「日本の勲章・褒章」ページ内にバナーがありますので、是非、ご活用下さい。紛失物自体は戻ってはきませんが、長年の功績を認められ授与された大切な勲章・褒章を頂いたと、日本政府が証明してくれる救済制度です。ご本人様でなくとも、ご遺族の方もご利用できますので、内閣府ホームページの案内に従い、各専門部署にお問い合わせ下さい。
出張買取の際、お伺いしたその場で、これは買い取ってもらえるのかとご質問を受けることは珍しくありません。残念ながら買取対象外のものもありますが、対象のものであれば追加買取させて頂きますので、気になるものがありましたら、是非、お尋ね下さい。今回のお客様の様に特に遺品の類ですと整理するにもお困りの場合が多いと思います。処分に悩んでいる骨董品や古道具がありましたら、お気軽にこちらの査定フォームこちらの査定フォームよりお問い合わせくださいませ。お待ちしております。